日本海溝から千島海溝の海域に設置されたS-netの1つのサブシステムイメージ図。
観測装置が設置された観測点の数はサブシステムごとに22-28点になる。
S-net(Seafloor observation network for earthquakes and tsunamis along the Japan Trench)は、海域で発生する地震や津波を観測する大規模なインライン式の海底観測網です。東日本大震災をもたらした2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震を受けて、北海道沖から千葉県の房総半島沖までの太平洋海底に地震計や水圧計から構成される観測装置を150点設置しています。各観測点のデータは光海底ケーブルで陸上局に伝送され、さらにそこから地上通信回線網で防災科研に送信されています。
南海トラフ海域に設置されたDONETの概要図。
観測点は、地動センサーシステムと圧力センサーシステムから構成される。
DONET(Dense Oceanfloor Network system for Earthquakes and Tsunamis)は、南海トラフで発生する地震や津波を観測するために海洋研究開発機構により開発された観測網で、平成28年4月に防災科研に移管されました。南海トラフ海域の熊野灘と紀伊水道沖に計51ヶ所の観測点があり、地殻変動のようなゆっくりとした海底の動きから大きな地震動,津波まであらゆる種類の信号をキャッチできるよう、多種類のセンサー(強震計、広帯域地震計、水圧計、ハイドロフォン、微差圧計、温度計)から構成されています。強震計と広帯域地震計はジンバル機構により水平に保たれています。センサーの交換や観測点の増設など、拡張性と置換性に優れています。観測されたデータは、リアルタイムで関係機関に送られています。 技術的な詳細は、開発元の国立研究開発法人海洋研究開発機構のDONETのページを参照ください(https://www.jamstec.go.jp/donet/j/donet/)。
いずれも地震や津波の早期検知や、津波遡上域の予測に役立てられ、これらの観測データは気象庁による緊急地震速報や津波警報・注意報にも使われています(津波情報に活用する観測地点の追加について)。また、これらの観測データから、地殻変動や地震活動をモニタリングを通じて、スーパーコンピューターを用いたシミュレーション研究と組み合わせて、巨大地震の長期評価へ貢献することが期待されます。
相模トラフ海域では1923年に大正関東地震が発生し、10万人以上の方々が亡くなる等、南関東地域に大きな被害をもたらしました。それ以前には江戸時代の元禄期の1703年にマグニチュード8クラスの元禄地震が発生しています。これらの震源域に地震計と水圧計を設置しているシステムが相模湾地震観測施設です。1923年大正関東地震は、2011年の東北地方太平洋沖地震と同様に海溝型地震と呼ばれる地震の一つです。震源域の南西側の相模トラフに沿って約120㎞沖合まで1本の海底ケーブルで接続されたもので、それぞれジンバル機構によって水平に保たれた6台の地震計と3台の水圧計から構成されています。この観測データは神奈川県平塚市の中継局に伝送されてデータ処理の上、即時的に当研究所をはじめ、気象庁や各研究機関に送られています。