地震・津波観測監視システム:DONET

観測網の全体概要

 南海トラフ海域では近い将来巨大地震の発生が懸念されています。1944年と1946年には熊野灘と紀伊水道沖から土佐沖にかけてそれぞれ東南海地震と南海地震が発生しました。 江戸時代の安政期には同じように東南海地震と南海地震が発生し、この時には熊野灘から東海沖に破壊が広がりました。これら巨大地震の破壊開始域である熊野灘と紀伊水道沖に DONETDense Oceanfloor Network system for Earthquakes and Tsunamis) と呼ばれる海底観測網が展開されています。熊野灘と紀伊水道沖に展開されている観測網をそれぞれDONET1DONET2と呼んでいます。DONET1は2011年7月から20点で本格運用を開始、DONET2は2016年3月から本格運用を開始しました。 現在、DONET1は2点増強されて、合計51観測点での運用を継続しています。DONETは国立研究開発法人海洋研究開発機構が開発・設置したもので、現在は当研究所に移管、運用されています。

観測網の構成

 各観測点は、小さい振動や大きい振動、地殻変動のようなゆっくりとした変動から地震のような激しい振動まで、あらゆる種類の信号をキャッチできるよう、ジンバル機構により水平に保たれた地動センシングシステム(6成分強震計、ハイゲインとローゲインの3成分広帯域地震計)と圧力センシングシステム(水圧計、ハイドロフォン、微差圧計、温度計)から構成され、多種類のセンサーによる観測が実現されています。強震計と広帯域地震計は200Hzないし100Hz、ハイドロフォンと微差圧計は200Hz、水圧計は10Hz、温度計は1Hzでデータ取得されています。DONETは基幹ケーブルを敷設したのち、海中ロボットで観測機器やコンセントの役割を果たすノードと呼ばれる機器を設置、海底ケーブルに接続して構築します。センサーが劣化、故障すれば交換することができ、 今後の研究が進捗して観測点の増設や位置の変更が必要になれば再設置が可能であるなど、拡張性や置換性に優れているところが特徴です。
 DONET1の観測データは三重県尾鷲市の古江陸上局に、 DONET2の観測データは徳島県海陽町の海陽町まぜのおか陸上局と高知県室戸市の室戸ジオパーク陸上局に伝送されてデータ処理の上、即時的に当研究所をはじめ、気象庁や海洋研究開発機構、大学等の各研究機関に送られています。